Sound 2-4

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 ♢ 「──ちょっと天音! 今日のがもしかしてそうなのっ?!」  昼休みの放送を終え、能鷹くんよりも先に教室に戻って来た私は、目を宝石以上に輝かせるアオイに両肩を鷲掴みにされた。 ある程度予想していたことなのに、アオイを回避する術を考えていなかったのは私が悪いだろう。 「そ、そうだよ。 今日のが例の男の子」  アオイだけじゃない。 その界隈に片足でも突っ込んでいる人たちが皆、私に向けて視線を送っている。 その視線の意味は考えるまでもなく、放送主は一体誰だという熱烈なる興味心だ。 つまるところ、彼女らの総意見をアオイが代弁したといっても過言ではない。 「めっちゃイケボじゃん。 何、ひょっとしていつもあの声と一緒に過ごしてんの」 「ま、まぁね」 「もうほんと羨ましい。 ね、あたしも放送室行っていい?」 「いや、それは駄目だよ。 名前も顔もまだシークレットなんだから」  いくら大親友であろうと、部員との約束を守るのが部長の役目だ。  アオイはこの間のように不満気に口を尖らせたけれど、予想通りというべきか「仕方ないか」の一言で流してくれた。 私は申し訳なさを覚えつつ、しかし胸裏には喜悦が滲み出ていた。  それは、能鷹くんの声はたしかに誰かの心を鷲掴みするんだ、と証明されたからだ。
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