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文化祭まで残り二週間も切ったこの日もまた、空は雨水を含んだ暗い雲に覆われていた。 今は一時的に止んではいるが、これはいつ降り出してもおかしくはない。
なるべく早く帰路に着きたいけれど、今日はそういうわけにもいかなかった。
いつものように放送部の活動を終えて職員室に鍵を返した後、私は昇降口ではなく六組に向かっていた。
「天音にも、装飾作りを手伝って欲しい」
数時間前、アオイからそんなことを頼まれたのだ。
どうやらお化け屋敷の装飾を全て作り上げるには、人数と時間が不足しているらしい。
これはなにも他のクラスメイトが非協力的な態度でいるのではなく、寧ろ様々な意見を取り込んだ結果、あんまり派手になりすぎたというわけだ。
ならば装飾製作に携わる有志に合わせた内容にすれば良いのかもしれないが、アオイはそれを拒んでいた。
「せっかくの二日間、盛大に青春したいじゃない」
というわけで、私はアオイの元へ合流することにしたのだ。 私自身、青春を過ごしたいと切に願っているから何も苦では無い。 雨に対する憂慮も教室に着く頃には霧散していた。
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