あと数センチが届かない

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「あー、届かない…。」 いつも自分を悩ませるものがある。 仕事で疲れてやっとの思いでベッドに横たわった自分に試練がやってきた。 「届かないんだよ、リモコンが!」 そう、今、晴樹はベッドに横たわった状態でテレビのリモコンを取るか、だるい体を起こしてリモコンを取るかで格闘しているのだ。 いっそのこと、テレビを見ずに寝るか。疲れているし早く寝た方が良いだろう。 でも、不思議なことに疲れている時ほどテレビが見たくなる。 よく、寂しい時にハングル語を聞きたくなり、韓流ドラマを見る人がいると聞くが、今の晴樹も誰かの声を聞いていたい気分だった。 さあ、どうする。ベッドからテレビリモコンまでの距離は約110cm。 「遠い…。」なんてことのない距離だが、一度ベッドに横たわった晴樹からすれば、果てしなく遠い距離である。 何度手を伸ばしてもあと一歩のところで届かない。もっと腕が長かったら…なんて、漫画のようなことを考えてしまう。 ご飯は食べる気がしない、風呂も明日でいいか。 何もやる気が起きない。仕方ない、諦めて寝てしまおう。 そう決めた瞬間。 「電気消してなかったな。」 さっと立ち上がり、電気のスイッチを消しに行く。そして我に返る。 「あ、ベッドから起き上がっている!」 よし、このままテレビを見るか、と思い晴樹はテレビを見始めた。 結局、晴樹とテレビリモコンの戦いは、テレビリモコンの勝利に終わった。だが、そんなことはおかまいなしで晴樹はバラエティ番組を見ながらゲラゲラ笑っている。 果たして、眠い体はどこへ…? なんて平和なんだろう。これが晴樹の日常。
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