ぼくの人生はぼくのもの

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ぼくの人生はぼくのもの

ぼくは、子どもごころにこの人は違うと思っていた 違うってみんながこの人を囲み集まって来ていたけどこの人の本当の姿はもっと違うと感じていた 中村 聡はぼくの母と再婚した開業医の40歳で、その時ぼくは小学校3年生だった 実父は病死している 母はぼくを一生懸命、育ててくれていたが勤め先の調剤薬局が縁で再婚したようだった 子どもごころに、感じていたのはいいお医者さんらしいと言うことだけ それは、お金に困っている人でも無料で診てあげたり 二束三文の誰も買わないような土地を持っているお年寄りにその土地を買ってあげて、そのお金で通院できるようにしてあげたりしていたから 誰にでも出来ることじゃないってみんなが言っていたから その頃は、ぼくもすごいお父さんだと鼻が高かった が、いつからか、父は段々と変わっていった それが子どものぼくにでさえ、わかって暗い影をおとしはじめたのは中学生になってからだった それは、どこの病院も見放すなかなか難しい 病気を治してあげた事がきっかけだった 医師としては素晴らしい事をした、はず・・・ が、相手が反社会的組織の人だったことから皮肉にも父は道を踏み外して行く 反社のNo.2だったその人は組員に この先生を俺と同等に思え と、命令した 父はその人から金や女や高いブランド品などを与えられるようになって徐々に人が変わっていった ぼくに対しても勉強を見てくれたり将来医療の道に行くならこんなことをした方がいいよとか教えてくれていた父が、乱暴になっていった それは、母やぼくや仕事の部下に至るまで みんな父にものが言えなくなっていった と、言うよりぼくが小さい時に感じていた違和感があからさまになってきたと言っていい 偽善者だったんだと思う 本当は、誰もいない時、ぼくだけになると急に冷たい目で見たり言う事をきかないと手をあげられたり蹴られたりしていたんだ でもお母さんが悲しむから言っちゃいけないと言われていた ぼくは高校生になった辺りからずっとどこか遠くへ逃げたかった でもお母さんにはどうしても言えなかった 何とか大学を卒業するまで我慢してやってきた さて、これからどうするか 一つだけ胸に温めていた思いがある ぼくは思い切って母に打ち明けようと思った 青年海外協力隊として人の為に何かやれる人間になりたい 昔の父が人の為に生きていたときのように ぼくもそれは引き継ぎたい でも金、有り余る金は人をダメにする ぼくは秘境のような所に派遣を希望するつもりだ 金などほとんど役に立たない人から人への援助 いつからか、父は帰らなくなった 生死もわからない 母は、ぼくの意思を尊重してくれた だから頑張って来ようと思う とてつもなく遠くへ行ってもう一度、人のために目一杯尽くしてみたい どれだけやれるかなんてわからない でもやってみたいんだ そしていつかとてつもなく遠い日本へ戻ってくるつもりだ さて、ぼくはどんな人間になっていくんだろうか
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