名前は知らない

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ばらばらになったパーツを今一度、合わせていくことに、随分と苦労をした。 復元された土偶は、ずっしりと重く、想像以上に見目麗しかった。 その景色を両の目にうつすことは、祖母の代からの宿願であった。 墓を掘り起こす盗人のように、地面に手を加えては、土で汚れる手を払うこともせずに、ただ黙々と動かした。 ぽたぽたと顔から汗が流れ落ちる。 暑い日だったのだ。 日の光は灼ける肌に食い込み、痛みとなる。 塩の味がした。目からぼたぼたと、絶え間なく溢れるそれは、汗ではなかった。 涙だ、泣いているのだわたしは。 初めて愛した女を、自らの手で殺めたのだから、泣いて当然だろう。 その白く滑らかな肌に刃を押し刺さねばならなかったのだ。 その時の絶望感といったら。 わたしは、自分自身を焼き殺したいと思った。 出土されたカケラを洗浄して繋ぎ合わせるのではなく、その逆だ。 粉々に握り潰したかった。 粉砕すれば、土に還れる。 風に運ばれる。 悠久の時を経て、出会いたかったのは、先人たちの遺物だと自身に呪いのように教えてきた。 しかし、いざ、発掘してみたら、掘り起こしてみたら、わたしのような日雇いの作業員にはおよそ相応しくない代物が目に入った。 あり得ないのだ、このようなものは。 かわらけしか出てこないこなように地に、陸軍の埋め立てによってすべて踏み込まれたこの区域に、いったい何を求めようか。夢など見られる訳がなかったのに。
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