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心地よい秋の風が、光の差し込んだ部屋を通り過ぎていく。
和也はその風の中で、夢見心地に昼食を食べていた。
紅葉に流れる鮮やかな光を眺めながら、今日の幼馴染との再会に思いを馳せるものだから、食事は一向に捗らない。
彼の喜びはその顔に浮かんでいる微笑と、秋風につられたように爽やかな表情を見れば、明らかだった。
彼の幼馴染である香織と彼は、彼が中学校のときまで一緒の学校に通い、通学を共にしていた。
彼の自由奔放で明るい性格を、彼女の無垢で優しい性格が包み込むように、彼女はいつも、彼の冗談に微笑みながら耳を傾けていた。
彼もまた、そんな彼女を見て安心感を得て、さらに得意げに話を進めるものであった。
そんな二人であったが、中学校を卒業してからというもの、互いに多忙な日々を送り、会うことは愚か、連絡を取ることさえほとんど無かった。
しかし数日前、彼女の方から、「話したいことがあるから会いたい」と連絡が入ったのである。
彼は昼食を食べ終えると、顔を洗い、鏡に向かって笑った。
鼻歌を歌いながら、軽快な足取りで、光のカーテンをくぐり、色鮮やかな秋の風景へ小走りに向かった。
空は雲一つない晴天であった。
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