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家に帰ると、お母さんは準備万端で待っていた。
「遅かったじゃない。間に合わないんじゃないかとハラハラしたわ。ほら、早く着替えて」
「え、いいよ。このままで」
「制服で? レストランで食事なのに」
「中高生にとって制服が一番の正装でしょ? お父さんのお葬式の時、お母さんがそう言ったんだよ?」
言い返せないで黙り込んでしまったお母さんを横目に、さっさと自分の部屋に通学リュックを置きに行く。
「親睦を深めるための機会なんだから、食事中はそんな嫌そうな顔しないでよ」
ため息交じりの声が後ろから追いかけてきた。
今日で二回目。お母さんが柏木さんと再婚するまで、あと何回親睦を深めなければいけないのだろう。
別に柏木さんが嫌いなわけじゃない。食事代は全部出してくれるし、車で送り迎えしてくれるし、四十過ぎにしては結構イケメンだし? 柔和な物腰だから、すぐにキレたりもしなさそう。言葉遣いも丁寧で誠実そうに見える。
そういった彼の姿が上辺だけ取り繕ったものではないことは、娘である柏木先輩を見ればわかる。
同じ部活の尊敬する先輩が義理の姉になるということは、たぶん喜ぶべきことなんだろう。それなのに、私はこの話をお母さんから聞いた時、素直に喜べなかった。
勉強でも容姿でも出来のいい柏木先輩が恨めしい。赤の他人なら比べられたりしないのに、出来の悪い私は柏木さんのこともお母さんのこともガッカリさせてしまうに違いない。
お母さんとずっと二人で暮らしたかった。お母さんは私だけのお母さんで、私はお母さんのただ一人の娘で。
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