The butterflies fly away.

視線の先に

「田中くん、知ってた？　Butterflyって『不安な気持ち』っていう意味もあるんだよ」
「知ってる。マイリ―・サイラスに『Butterfly Fly Away』 って曲があるから。心配事がなくなるって意味のタイトルだよ」
「私も蝶になってどこか遠くへ飛んで行っちゃいたい」
　夜空を見上げても、地面にへばりついている自分を思い知らされるだけだ。ため息を零した私の頭をポンポンと田中くんの大きな手が撫でてくれたけれど、バス停に着くとすぐにその手は離れていった。

「え？　駅まで歩くんじゃないの？」
「そういう状況だったら早く帰った方がいいよ。奥寺のお母さん、いろいろ心配してるだろうから」
「うん、そうだね」
　田中くんはいろいろ考えてくれている。自分のことしか考えられない私はやっぱりまだまだだなと思いながら、バスに揺られていった。