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どこでもよかった
どこでもよかった。
このどうしようもないくらい、息の詰まるような空間からすぐに、逃げ出せるのなら。
たとえば、ぼくのこの世界は、まるでたかだか三十分ほど歩けば一周してしまうほどの小さな島のようだ。
たしかに、この世界がそう見えてしまうこともあるし、ただ単にうすぐらい研究施設のように感じるときもある。
はたまた、そこは車庫入りしてしまった回送電車の中になることもあれば、現役引退したはずのシャトル内になぜかぼくだけ取り残されちゃったみたいな、そんなシチュエーションになることもあった。
ぼくの世界はそうやってめまぐるしく変化しているんだけど、やっぱりいつも、同じところを行ったり来たりしている。
ぼくはね。わかるかな。そう、ただ遠くへ行きたいんだ。
わかるかな。もちろんだけれど、このぼくのせまい世界ってのは、ぼくの監視の目でいっぱいなんだ。
わかるかな。ぼくはね。ぼくの監視の行き届いていない世界へと逃げ出して、ぼくの考えもつかないような、新しい光景をながめて、新世界の土のにおいをかいでみたかったんだ。
どこでもよかった。
とは言ったけれど、ほんとは、はじめからあそこに行く必要があったんだ、と今になって感じている。
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