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色褪せた日の記憶
色褪せた遠い日の記憶だ。
一面の麦畑がなびき、ささやき声を上げた日の記憶だ。まだ立てるようになってまもないわたしに、神妙な顔をした叔父が言った。拳を握りしめ、歯をくいしばって。
ーーお前の父親は行方不明だ。母親は海外にいる。
そのときの叔父の顔は昨日のことのように思い出せる。
それから数年経って叔父は突如いなくなり、わたしはいまだ会ったことのないお母さんを頼りに生きてきた。学校でも孤立していき、家に帰っても誰もいない。そんな繰り返しをさびしくないと自分に言い聞かせながら、粛々と一人で生きてきた。
いつしか空いた胸の穴と、冷たく重い違和感に目をそらしながら。
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