紙飛行機

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遠くへ 遠くへ 遠くへ。 このままどこまでも遠くへ行ければ良いのに…… 若草の香りを含んだ早朝の冷たい空気が、熱くなった肺に滑り込む。 出た時には満杯だった鞄を空にして、俺は今日もここに戻ってきてしまう。 「おかえりー、にいちゃん!」 「お帰り。今からパン焼くけど、にいちゃんも食べる?」 「お帰りなさい。いつもご苦労様ね」 家に帰れば、朝から元気な弟たちと母が迎えてくれる。 末っ子は三才。そこから五歳、七歳、九歳、十二歳、十四歳、そして高三で十七歳の俺になる。 父は七人もの子どもを母に産ませておきながら、一昨年、外に作った女の元に消えた。自分の遺伝子をまだ残すつもりらしい。 離婚後も最低限の生活費は送られてくるが、年々食欲が増えていく彼らには足りていない。 一度は高校を辞めて働こうとも思ったが、母に止められた。 弟たちは高校も望む所に入れないかもしれないから、授業料も全額払い終わっている俺だけはきちんと卒業してほしい。 そんな事言われたら辞める訳にもいかなくて、朝と放課後にバイトを詰め込んだ。 部活やったり、彼女作ったり、思い描いた高校生活は実現する事なく、あと一年もせず終わりを迎える。
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