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「俺、家に帰る……」
母さんが何か言おうとしたが、その前に立ち上がって木田さんの家から出ていく。
玄関まで出た所で、木田さんに腕を掴まれて止められた。
「俺に何か?」
「君にはずっとお礼を言いたかったんだ」
「は?何で?」
「君が家族を支えてきたから、私は君のお母さんに出会えて、君たちに出会えた。清一君、君の二年間の頑張りのおかげなんだよ」
そこまで言って、木田さんは「ありがとう」と頭を下げ、上げてからやっと俺の腕を放した。
「私じゃ、君の代わりにはなれないけれど、清一君が抱えてきたモノを代わりに持つことはできる」
「……すっかり、俺の代わりになってるじゃないですか?」
「なれないよ。あの子たちがこの家に来てまず始めたのは、清一君の部屋決めだった。この場にはいない君を取り合ったり、事あるごとに君の名前が出てくる。君の代わりは誰にもできない」
木田さんがニコリと優しく笑う。
木田さんは良い人だ。そんな事は既にわかっている。
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