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「富川さん、進路希望書けた?」
「まだよ」
昼休みにわざわざ富川さんに話しかける。
昨日、紙飛行機を折ってみて気づいた事があった。
「新崎君は?」
「俺もまだだよ。でも富川さんは進路の希望、決まってるんだろ?」
「何言ってるの?決まってないから書けてないんじゃん」
富川さんが少し苛立たしげに言葉を返してくる。
だが、富川さんは不思議ちゃんで通ってはいても、学校の成績や頭の良いとも噂されている。
そんな彼女が、飛ばない紙飛行機を作るはずがないのだ。
手先が不器用という可能性も、既に作られている紙飛行機を見れば否定できる。
彼女自身が元々墜落する様に作ったとしか言いようがない。
「本当はやりたい事あるのに、躊躇ってるんだろ?だから、適当に誰かの希望で埋めようとして、だけど諦められなくて動けなくなってる」
「まだ進路の希望を書いてない人にとやかく言われたくない」
「俺は佐川先生に、今の俺の心境とか、全部相談するつもり。富川さんは本当にやりたい事をやるための努力、何かしたの?」
俺がそう問えば、富川さんは軽く睨み返してくる。
「新崎君って、根に持つタイプでしょ?」
「富川さんは、案外普通なところがあるんだね」
「俺は笑わないし、否定もしないから教えてよ」と言ってはみたが、富川さんは教えてくれなかった。
(了)
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