茉奈と圭太

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茉奈と圭太

「じゃぁね、さよならっ!」 茉奈(まな)は、カフェのテーブルに彼からもらったBLOOMの指輪を置いて、踵を返して店から出た。 (どっか、遠くへ行きたい、誰もわたしのことを知らない遠くへ) 心の中でつぶやくと、涙があふれ出てきた。 にじむ街中をただただ歩き続ける。 茉奈と圭太は高校一年のとき、同じクラスだった。 文化祭実行委員に選ばれ、いっしょに活動していく間に仲良くなり、付き合いだしてもうすぐ一年 サッカー部の圭太と、吹奏楽部の茉奈は、部活の帰りに待ちあわせてデートした。 クリスマスもお正月もふたり一緒だった。 茉奈の誕生日に、圭太からBLOOMの指輪をプレゼントされた。 「茉奈、お誕生日おめでとう。今はこれしか買えないけど…」 圭太からそういって渡された指輪を受け取り、茉奈は、 (BLOOMの指輪でも、高校生にとっては十分なプレゼント。 今は、ってことはいつかは・・・) って、ふたりの将来を思い描いて幸せだった。 高校2年になり、クラスが別れ、それぞれの部活が忙しくなって、以前ほどデートができなくなっていたけど、圭太の試合に応援にいったり、少しでも時間を見つけてデートを重ねていた。  
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