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「小さなお嬢さん、怯えることはない。たっぷりと可愛がってあげるから、全てを委ねるといい」
「はい、旦那様」
甘く、体の芯まで届く声色で、ロベルトはマリアの心を鷲掴みにした。出会って数分だというのに、何をされてもいいと思わされてしまった。ロベルトは、それだけの魅力を持っていた。
ロベルトは、林檎も噛み砕けそうにないほど小さなマリアの顎を掴み、引き寄せた。
「力を抜いて、楽にするといい。夜は長いのだから」
鼻と鼻がくっつく距離で呟くと、ロベルトは桃色の唇を奪った。柔らかな唇で、マリアの上唇を焦れったく食む。ゆっくりと官能が高められ、マリアの頭は次第にふわふわとしてくる。
こんなキスは、久しぶりだった。まだ生まれ故郷にいたときに羊飼いの幼馴染と厩で交わした青い口付けのように、胸が高鳴った。目の前にいる自分を、制欲処理の道具としてではなく、一人の人間として愛してやろうとする、気持ちが通った恋人のキスのように感じた。
「っはぁ……」
「君はウブなのかな。キスだけでこんなに真っ赤になって」
さらりと頬を撫でられ、マリアは一層赤面する。普段は違うのです、と言いたかったけれど、それも恥ずかしく小さく俯くだけに留まった。
細くて長い指によって再び顔を上げさせられたマリアは、薄く唇を開く。隙間からは、真っ赤に熟れたトマトのような舌が見え隠れしていた。
ロベルトはマリアの思惑が手に取るように分かっていたから、熱い舌を待ち望んでいる場所に差し込んでやった。
「んっ、ぁ」
引っ込み思案な舌先を絡めとって吸い上げると、マリアの体は甘美な快感に溺れて、小さく痙攣した。ロベルトは面白がるように口の中で暴れた。時間をかけて綺麗に並んだ白い歯を舐め上げたかと思えば、水音を立てながらねっとりとマリアの舌と絡みあった。
とりわけマリアが弱かったのは上顎の柔い部分で、小刻みに左右にくすぐられると擽ったさにも似た刺激に、身をよじらせるしかなかった。
「ふ、っくぅうん……」
「良さそうだね」
良い、なんてものではなかった。マリアの知っている交わりとは、金を持った高飛車な男たちに好き勝手体を使われるだけのものだった。それが今夜は。体の内側からグジュグジュに溶けて、形を保っているのが不思議なほどだった。まだ、唇しか触れ合っていないのに、この先はどうなってしまうのだろうか、と不安と歓喜で入り混じった気持ちが、マリアを支配していた。
ロベルトは薄い唇でふ、と笑うと、マリアを抱えて後ろから抱きしめ、背中に手を伸ばした。オフショルダーのイブニングドレスは、リボンで編み上げて留められているものだった。コルセットとなっている萌黄色のリボンの下には何も身につけられておらず、シルクのように滑らかな肌がそのまま見えていた。
一番下で蝶結びになっているリボンをするりとほどき、ループから順々にリボンを外していくと、白い肌がどんどんと露わになっていく。
「綺麗な肌をしているね」
「お褒め頂いて、嬉しいです」
マリアの声は震えていた。リボンが抜き取られ背中を滑るたびに、感度が段階的に高められていったのだ。
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