2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
登校直後に雨が降り出した。
天気予報は一日中晴天。実際、私が学校に来る間、空は雲一つない青空だった。
教室の窓から外を覗くと、今登校中の生徒が走っている様子が見えた。
その中に発見した知った顔。仲の良いクスラメイトが土砂降りの中を走っている。
あの位置からだと、どんなに必死に走っても、校舎に着くまでにはずぶ濡れだ。
着替えはあるのかな。今日は体育がないから、私は持ってないけれど、タオルくらいなら鞄に入っている。濡れて入ってきたらせめてこれを貸してあげよう。
そんなことを考えている間に、友達の姿は後者の陰に消えた。
それから程なく。
「おはよう」
教室に入ってきた友達に目を見張る。
サラサラの髪に、濡れた様子などまったくない制服。
さっき、雨の中を走る彼女を確かに見かけた。でもあれは、もしや人違いだったのだろうか。
「お、はよう。今、来たトコ?」
「そうだけど。どうかしたの?」
「だって、今、外は急な大雨で…」
しどろもどろに告げる私を友達はじっと見据えた。その顔がふいに苦々しい笑顔になる。
「あー。そっか。今、雨降ってたね。だったら濡れてないと不自然か」
言うなり、友達の髪や服が湿り、ついには水滴が滴り始めた。
「雨とか、普通は降ってもなんともないから忘れてた。これで、突然の雨に降られた人っぽいかな?」
あっけらかんと聞いてくる相手に言葉を失っていると、私を見る目がきらのりと光った。
「これ、〇ちゃんは仲良しだから教えたんだよ。他の人には言わないでね」
反射でうなずくと、目の前の相手はいつも通りの笑顔を私に向けた。
…いったい、彼女は何ものなのだろう。その疑問が渦巻くけれど、直接尋ねる勇気はないし、向こうが友達と言ってきている以上、いきなり距離を開けることもできない。
でもこの先は…本能が『怖い』と思ってしまった子の存在と、少しずつ離れたいと思っている。
にわか雨の朝…完
最初のコメントを投稿しよう!