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白い手袋が招く。
「よくできたおもちゃだな」
ガチャリ!
扉が開いた、中をのぞくと広間になっている、その奥には、大きな階段が二つ向かい合ってのびている、歩き出すと、ポッ、ポッと前を照らすように明かりがついた。どうも二階へと招いているようだ。
入っても、いいんだよな?
耳からイヤホンを外した、シャカシャカとまだ音楽が鳴っている。
一歩足を踏み入れた。
音楽が鳴り、テーブルには、何とも、古風な格好をした紳士淑女が座って、何か飲み物を飲んでいる。
がしっと腕を掴まれたんだ。
「う、わっ、な、なんだ?」
汚いボロボロの服を着た男がにっと笑った。
あわてて音楽を止めた、イヤホンから流れている現代の音楽とは違う、もっと古いような。ピアノは、聞いたことのあるようなとても古い感じの音楽を演奏している。その周りには何ともこれまた、古いドレスをまとった女性が、胸元の大きく空いたドレスで、誘うように手招きをしている。
「兄ちゃん、一人かい、一緒に飲もうや」
もう一人、昔の船乗りのような格好をした、赤い鼻の男に勧められ、席に付いた。
「結構、お客さんがいるんですね?」
「客?なんの話だ?」
「いや、ここ、ホテルですよね?」
「ホテル?じゃ、お前さん、生きてる人間か?」
「生きてる、アハハハは、みなさん、今日は仮装パーティかなんですか、そんな恰好をして」
ざわめく会場が一瞬にして静かになった。
バン!
踊り子?
ドラマで見たフラメンコのような格好をした女がスカートを翻し、テーブルに片足を置いた。
「いつからここは、生きてるやつも泊めるようになったんだ!」
「すみません、ここも維持費がかかる物ですから」
維持費?小さな声が聞こえた。
「あたいらは、生きてるのはオーナーのあんただけでいいんだ!それ以外は困るんだよ!」
―そうだ、そうだ
「そんなこと言われましても、私も食べていかなきゃいけませんので」
まあ、まあ、と止めたのはまたこれも古い燕尾服を着た紳士。
「紳士淑女の皆さん、ここは、オーナーさんのいう事を聞こうではありませんか、私たちが厄介になっているのですから…違いますか?ん?」
さっきからオーナーと言っている。
オーナーだって?何処にいるのかな?
俺は声がする辺りを見渡した。オーナーと言われた人どこだ?
物が動いた、声のする方、真下をのぞく、足元に、小さな男が上を見上げている。
「ありがとうございます、お客様、お部屋にご案内させていただきますので、どうぞこちらへ、ハア、イヤホンじゃ聞こえないよな」
「う、ワー、すみません、誰もいないのかと思ってました」
う、ウサギ?でかいウサギに見えた。グレーのスーツがいや~なんともかわいい男の子だな。
「いえ、お構いなく、小さすぎて、どなたの目にも止まらない者ですから」
「すみません、ご厄介になります」
「どうぞ、こちらへ」
男の案内で、右側の大階段を上り二階の端の部屋に通された。
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