第一話 雨のホテル

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 白い手袋が招く。 「よくできたおもちゃだな」 ガチャリ!  扉が開いた、中をのぞくと広間になっている、その奥には、大きな階段が二つ向かい合ってのびている、歩き出すと、ポッ、ポッと前を照らすように明かりがついた。どうも二階へと招いているようだ。  入っても、いいんだよな?  耳からイヤホンを外した、シャカシャカとまだ音楽が鳴っている。  一歩足を踏み入れた。  音楽が鳴り、テーブルには、何とも、古風な格好をした紳士淑女が座って、何か飲み物を飲んでいる。  がしっと腕を掴まれたんだ。 「う、わっ、な、なんだ?」  汚いボロボロの服を着た男がにっと笑った。  あわてて音楽を止めた、イヤホンから流れている現代の音楽とは違う、もっと古いような。ピアノは、聞いたことのあるようなとても古い感じの音楽を演奏している。その周りには何ともこれまた、古いドレスをまとった女性が、胸元の大きく空いたドレスで、誘うように手招きをしている。 「兄ちゃん、一人かい、一緒に飲もうや」  もう一人、昔の船乗りのような格好をした、赤い鼻の男に勧められ、席に付いた。 「結構、お客さんがいるんですね?」 「客?なんの話だ?」 「いや、ここ、ホテルですよね?」 「ホテル?じゃ、お前さん、生きてる人間か?」 「生きてる、アハハハは、みなさん、今日は仮装パーティかなんですか、そんな恰好をして」  ざわめく会場が一瞬にして静かになった。 バン!  踊り子?  ドラマで見たフラメンコのような格好をした女がスカートを翻し、テーブルに片足を置いた。 「いつからここは、生きてるやつも泊めるようになったんだ!」 「すみません、ここも維持費がかかる物ですから」  維持費?小さな声が聞こえた。 「あたいらは、生きてるのはオーナーのあんただけでいいんだ!それ以外は困るんだよ!」 ―そうだ、そうだ 「そんなこと言われましても、私も食べていかなきゃいけませんので」  まあ、まあ、と止めたのはまたこれも古い燕尾服を着た紳士。 「紳士淑女の皆さん、ここは、オーナーさんのいう事を聞こうではありませんか、私たちが厄介になっているのですから…違いますか?ん?」  さっきからオーナーと言っている。  オーナーだって?何処にいるのかな?  俺は声がする辺りを見渡した。オーナーと言われた人どこだ?  物が動いた、声のする方、真下をのぞく、足元に、小さな男が上を見上げている。 「ありがとうございます、お客様、お部屋にご案内させていただきますので、どうぞこちらへ、ハア、イヤホンじゃ聞こえないよな」 「う、ワー、すみません、誰もいないのかと思ってました」  う、ウサギ?でかいウサギに見えた。グレーのスーツがいや~なんともかわいい男の子だな。 「いえ、お構いなく、小さすぎて、どなたの目にも止まらない者ですから」 「すみません、ご厄介になります」 「どうぞ、こちらへ」  男の案内で、右側の大階段を上り二階の端の部屋に通された。
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