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「そうですか、じゃあ、おじい様の後を引き継いで」
ええ、使用人たちもいい人ばかりいたんです、でもある日、おじいさんが倒れてから、客がぱったりとこなくなって、その代わり、奇妙なことが起り始めて、使用人たちはやめて行ってしまった。
「どっかの、嫌がらせじゃないんですか?」
「そうじゃないんだ、おかしいのがこの厨房、ここだけは、何も起こらない」
「そういえば、さっき酒盛りしていたの、誰も来ませんね」
「そうでしょ、だから俺はここで寝るようになっちゃって」
辺りを見回すがベッドもない、どこで?
「あそこの一番下の中で寝ています」
指を指したのは棚?一番下?
「開けてもいいですか?」
頷いた。
開けると、そこには小さなベッド、きちんと並んだ本。小さなスタンドもある。
「あの、オーナーはおいくつなんですか?」
「僕ですか?エーッと三十、四かな、五になったか?」
「え、ウソですよね、俺、二十九です、俺より上?」
アハハハ、上なんだー、と声のトーンが下がった。
ハア、この身長じゃあな、と大きなため息をついた。
「あのさあ、なんかおかしくない、おじいさんが死んだのってさ、オーナーがいくつの時?」
「えっとー学校に上がる時だから六歳かな」
「あのさ、これ、あんたの家族の写真だろ?」
飾られた写真、古いモノクロ写真がきれいな額縁に入って並んでいる。家族の物、かつての従業員だろうか大勢で映った物、何気に見た、色あせたものはそれだけで年月を感じさせた。
「うん、そうだけど、よくわかったね」
「これ、その指輪だよね」
ネックレスに通した指輪と同じものをつけた女性
「亡くなった母です」
「そうか、それじゃあ、あんたは、なんかの魔法にでもかけられたかもしれないな」
「なぜですか?」
「ん?だって、六歳で止まってしまった身長、その時に死んだじいさん、なあ他の人たちはどうしたんだ?」
「俺の身長止まったの?使用人かたぶんもういないと思う」
学校なんかはどうしたのか聞いた、ちゃんと卒業した、その頃までは世話をしてくれた人がいたそうだ。
「そうか、年か?それじゃあ、幽霊たちに聞こうか、何であいつらが居座ったか」
「っでも、あいつら」
聞いたことあんのか?
うん、でも、のらりくらりで…
ふーんそうなんだー
指を扉の方に向けている、その先を見ると小さな窓に、ちらちらと何かが見える。
「さてと、誰から聞こうかなあ」
バン!
扉を開けた。シュッとその辺にいた物が消えた。
「捕まえたー」
「離せ、離せ、嫌だ―ここは嫌だー」
首根っこを掴まれた男。
「なんで嫌なんだ?」
「え、そうだ、なんでだ?」
「ハア、そんなのもわかんねえのか?」
入れ!
足を突っ張って、入ろうとしない、扉に手をかけて、泣いている。
「あんな、もう入ってんだ、何で泣くんだよ」
「え?」
片方の足が中に入っている。
「あは?入ってる」
「何で、ここが嫌なのか、話してもらおうか?」
「はてな?どうしてだろう?」
「ほら、こんなんです」
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