第一話 雨のホテル

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 こいつら死んでいるのなら覚える気がないのか? 「わかった、それじゃあんたの名前を聞こう」 「俺?」  そうだ! 「ん―俺は…たぶんピーターだ」  たぶん? 「みんなこんな感じなんだ」 「でもおかしくないかたぶんって」  死んだときの事を覚えていないんじゃないか? 「じゃあ、何でここに来たんだ?」 「楽しそうだったから」 「楽しそう?」 「何が?」  窓から見えた、みんな楽しそうだった。 「窓から、中が見えたのか?」 「違うよ、窓から見えたんだ」  ん?なんか変?どこかの窓から見えたってことか? 「どこから見たの?」  向こうと指を指した。 「じゃあ、君は外から来たの?」 「うん」 「オーナー。行ってみますか?」 「いってみましょう、ピーター案内してください」  俺はオーナーを肩に乗せると外へ出た、いつの間にか雨はやみ、月まで出て、町を照らしていた。  ピーターが案内してくれたのは、ホテルの裏道の大きな通りを挟んだ向かい側のホテルの下。そうさっき俺が嫌な思いをしたホテルだ。道端に花が手向けてある、まだ数日しかたってないようだ。  ここだと思うと言う。 「目が覚めたら、ここに立ってたんだ」  真上を見た、オーナーと目があって指を指した。  ―飛び降りですかね?  ―ありえるな・・・。  大きなホテルの看板sun hotelのオーの文字には窓のようなものがあるその裏側を落ちて来たのなら、彼が言っている意味がわかるような気がした。でも、楽しい何が見えたんだろう?  花束を遠い目で見るピーター。 「何か感じますか?」 「感じる?んー誰か懐かしいような人が来ているような」  これは昼に来ないと判らないなと思った。オーナーに帰りましょうと言った、彼は新しい住人、そうオーナーが六歳の時にいた古い住人を探さなくてはいけない。 「そうですね、ピーターは何か知っていますか?」 「古い人ね、あートイレにいる女性と男性のカップルは俺の前だって聞いたな、ねえオーナー。俺は天国に行けるのかな?」 「行きたいかい?」  ここは楽しい、でもここに立っているとなぜかそういう思いにかられると言う。 「まずは君の生きているときの名前が必要だろうな、いくら神様でも仮の名前じゃ天国に呼んでくれないだろうからね」  ハハハ、そりゃそうだな。俺は、雇われコックとして使ってもらえることになった。だがこのままじゃ客さえも来ない、金ももらえない。まあ、雨風がしのげて、何とか毎日食えりゃ俺はいいんだけどな、乗りかかった船だし、ここはオーナーの力に多少なりとも尽力しますか。
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