24人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女のほうからハグしてくる気配がないので、俺から彼女を抱きしめる。
なんだよもう。
たった四時間で俺のほうがこの人のこと、こんなに好きになって。
今までさんざん仕事だと余裕で割り切ってきて、この先もずっとそうだと思ってきたのに、こんな例外あるのかよ。
例外、だけど、これも仕事。
早く腕をといて、ハグはどうだったかと感想を聞かなければ。
その前に、このままでひとこと言わせて欲しい。
「葉月ちゃんに、また会いたい」
ビジネスライクでかまわない。
俺に惚れて傷ついてもお客さんの責任とか思ってきたのに、逆に俺がお客さんに惚れるなんてフェアじゃないし。
彼女の恋人になんてどうせなれないだろうから、仕事でもまた会えればラッキーだと思うことにする。
葉月ちゃんが動く。
彼女の腕が俺の背中にまわり、彼女の手のひらの熱が、背中に伝わる。
長すぎる実地体験、俺の肩口に顔をうずめた彼女がつぶやく。
「今のはグッときた」
あぁ、ようやくかよ。
俺は深く息をはいて、抱きしめた腕をおろす。
彼女も静かに手を離し、顔を離し、俺を見上げた。
「俺は仕事抜きでグッときてるって言ったら、信じてもらえるのかな」
自信のなさから弱気な声音になって、情けなくて苦笑する。
葉月ちゃんも、苦笑した。
「仕事時間じゃないのにここまで送ってくれて、こんなサービスしてきたら、信じちゃうよね」
最初のコメントを投稿しよう!