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 彼女のほうからハグしてくる気配がないので、俺から彼女を抱きしめる。  なんだよもう。  たった四時間で俺のほうがこの人のこと、こんなに好きになって。  今までさんざん仕事だと余裕で割り切ってきて、この先もずっとそうだと思ってきたのに、こんな例外あるのかよ。  例外、だけど、これも仕事。  早く腕をといて、ハグはどうだったかと感想を聞かなければ。  その前に、このままでひとこと言わせて欲しい。 「葉月ちゃんに、また会いたい」  ビジネスライクでかまわない。  俺に惚れて傷ついてもお客さんの責任とか思ってきたのに、逆に俺がお客さんに惚れるなんてフェアじゃないし。  彼女の恋人になんてどうせなれないだろうから、仕事でもまた会えればラッキーだと思うことにする。  葉月ちゃんが動く。  彼女の腕が俺の背中にまわり、彼女の手のひらの熱が、背中に伝わる。  長すぎる実地体験、俺の肩口に顔をうずめた彼女がつぶやく。 「今のはグッときた」  あぁ、ようやくかよ。  俺は深く息をはいて、抱きしめた腕をおろす。  彼女も静かに手を離し、顔を離し、俺を見上げた。 「俺は仕事抜きでグッときてるって言ったら、信じてもらえるのかな」  自信のなさから弱気な声音になって、情けなくて苦笑する。  葉月ちゃんも、苦笑した。 「仕事時間じゃないのにここまで送ってくれて、こんなサービスしてきたら、信じちゃうよね」
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