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デートの段取りは事前のメールですでに決まっている。
あんみつ屋でお茶しながらのお話しと、アーケード街でのウインドウショッピング。
時間は十四時から十八時までの四時間。
葉月ちゃんをうながしあんみつ屋へと足を向けた道すがら、どうしてレンタル彼氏を利用したのかと聞いてみる。
「話すのが仕事だから会話がすごい楽しいって友達に聞いてて」
気さくな口調で話す葉月ちゃん。
対して俺は苦笑いを見せた。
「俺はそのへんにいる普通の男と変わらないよ?」
研修も受けてるし場数こなしてるから話すのはまぁ自信あるけど、ハードル下げといて最後に期待以上だったと思わせたい。
葉月ちゃんは言葉を続ける。
「で、ちょっと前に彼氏にフラれちゃって、休みの日に時間持て余すんだよね。試すなら彼氏いない今かなって思ってさ」
傷心中でさみしさまぎらわそうとしたクチか。
こういう子に変に優しくしたら手違いで惚れられる可能性がある。
惚れて傷ついても割り切らなかったお客さんの責任だけど。
「そっか。でも今から四時間は特別な時間だから。普段のこと忘れて楽しんでね」
俺との時間は日常ではないと暗に念を押して、俺は振る舞いを修正する。
理想的な彼氏を演じるのはまずい。
持て余してしまったこの時間を甘ーくではなく、気分よく過ごしてもらう。
俺の所属するトコはリピーターの数でランクが上がって時給も上がる。
リスクを回避しつつうまく立ち回ってリピーターになってもらうのが、今日の目標。
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