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 ◯◯駅はアーケード街の終わりから橋を渡った先にある。  ここから徒歩で三十分程度。  アーケードを腕組んで歩きながら今日はどうだったか聞くと、楽しかったとの無難な回答。  これさ、彼女もしまたレンタル彼氏頼むとして、俺を頼むのか?  別のタイプの彼氏頼んで今日と違った体験しようとするだろ。  また俺とデートして欲しいと今の俺が言うのは、リピーターになって欲しいっていう営業。  余裕でいつも言ってるセリフなのに、気が引ける。  ビジネスライクなイメージで受け取って欲しくない。  アーケードを抜けると急に視界が開ける。  遠くの山肌に沈みかけの夕日、信号二つ先には長い橋。  橋を渡りきったら、間もなく駅。  葉月ちゃんがまた会いたいと思うような行動、俺取れてた記憶がない。  全然ときめかせることができなかった、ただ一緒に日曜を過ごしただけ。  別れが近づいたとき、いつもならお客さんのほうからサービスを要求してくるんだけど、この子要求しそうにないから、提案する。 「葉月ちゃん、せっかくの機会だからハグもしてみる? ハグNGなレンタル彼氏もいるけど、俺はOKなんだよね」  最後の望み、ここでグッときてくれたりしないだろうかと思った、けれど。 「そうだね、お願いしようかな」  彼女は平然とそう言って組んでいた腕をとくと、まったくうわついた感のない表情で俺を見た。
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