24人が本棚に入れています
本棚に追加
5
◯◯駅はアーケード街の終わりから橋を渡った先にある。
ここから徒歩で三十分程度。
アーケードを腕組んで歩きながら今日はどうだったか聞くと、楽しかったとの無難な回答。
これさ、彼女もしまたレンタル彼氏頼むとして、俺を頼むのか?
別のタイプの彼氏頼んで今日と違った体験しようとするだろ。
また俺とデートして欲しいと今の俺が言うのは、リピーターになって欲しいっていう営業。
余裕でいつも言ってるセリフなのに、気が引ける。
ビジネスライクなイメージで受け取って欲しくない。
アーケードを抜けると急に視界が開ける。
遠くの山肌に沈みかけの夕日、信号二つ先には長い橋。
橋を渡りきったら、間もなく駅。
葉月ちゃんがまた会いたいと思うような行動、俺取れてた記憶がない。
全然ときめかせることができなかった、ただ一緒に日曜を過ごしただけ。
別れが近づいたとき、いつもならお客さんのほうからサービスを要求してくるんだけど、この子要求しそうにないから、提案する。
「葉月ちゃん、せっかくの機会だからハグもしてみる? ハグNGなレンタル彼氏もいるけど、俺はOKなんだよね」
最後の望み、ここでグッときてくれたりしないだろうかと思った、けれど。
「そうだね、お願いしようかな」
彼女は平然とそう言って組んでいた腕をとくと、まったくうわついた感のない表情で俺を見た。
最初のコメントを投稿しよう!