Day2:Day Down

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Day2:Day Down

深夜1時半を回った頃、僕は昨日彼女と出会った橋の上に到着していた。 時間の指定は特に無かったので同じ時間に行くことにしたのだが、早めに家を出たら予定より1時間ほど早くついてしまった。 橋の上は昨日と同じように暗く不思議なほど人気が無い。 待つこと1時間。 流石にそろそろ来るとは思うのだが…そんなことを考えていると、遠くから誰かが走ってくるのが見えた。 目を凝らしてみると、間違いなく昨日会った彼女だった。 僕と目が合うと、走りながらも笑顔で手を大きく振っていた。 ふと、しっぽを振りながら走ってくる小型犬を連想した。 「ごめんなさい!本当はもうちょっと早く来たかったんですけど、さっきまでひいお爺様に捕まっていて…」 そう言って、彼女は背中を丸めてしゅん…とする。やっぱり犬みたいだ。 「あの!これ!よかったらどうぞ!うちで取れた野菜とかで作ったスムージーです。お口に合えばいいんですけど…」 彼女は気を取り直して、持っていたポシェットから僕に飲み物をくれた。せっかくなのでいただくことにする。 野菜のスムージーは以前飲んだことはあったが、もらったスムージーはそれらとは比べ物にならないくらい美味しかった。生き返ったと言っても過言ではない。命の水ならぬ命のスムージーだ。と心の中で絶賛していたところ、顔がにやけてしまっていたのか彼女が恥ずかしそうに口を開いた。 「あの…そこまでおいしそうに飲んでくれたのなら、作ってきた甲斐がありました。えへへ」 彼女は嬉しそうに笑う。 少しして落ち着いたところで、彼女がぽつりぽつりと話し始めた。 「もう…明日なんです。わたしの20歳の誕生日。だから、明日お招きするってひいお爺様が…でも、そもそもわたしが悪んですけどね」 そう言って彼女は自傷気味に笑った。 「わたし、もともと体が弱い方で、陽の光に当たるだけでもお肌が大変なことになっちゃうんですよ。だからあまり人と関わる機会が無くって…あなたが初めてなんです。だからつい、嬉しくなっちゃって」 嬉しいという言葉とは反対に彼女の表情は沈んでいる。一体何を思っているのだろうか。 「わたし。悪い子だ…」 彼女は膝を抱えるようにしゃがみ込む。 そして急にすすり泣きを始めた。驚いた僕は声をかけることも出来ず、ただ背中をさすることしかできなかった。 手のひらから彼女の震えが伝わってくる。 何かを抱え込んでいるのだろうか。僕には彼女が罪悪感で押しつぶされているような、そんな風に見える。 僕は彼女を抱きしめた。 彼女は僕の胸に顔をうずめて泣いた。 10分ほどたっただろうか?彼女はゆっくりと落ち着きを取り戻していった。 「…ごめんなさい。わたし、あなたに甘えちゃってる。でも、最期にひとつだけお願いを聞いてほしいの」 すると、彼女は持っていたポシェットからそんなに大きいものが入れられたのかと思うような大振りの包丁を取り出した。 そして彼女は僕に言った。 「わたしを、殺して」 頭の中の混沌がさぁーっと消えて、彼女の声が響き渡った。 月の光がゆっくりと現れて彼女を照らす。 ありえない。絶対にありえない。 ふと気が付くと、手に彼女の取り出した大振りの包丁が握られていた。 彼女が僕の手に握らせたのだ。そのまま胸元まで僕の手ごと包丁をもっていく。 「お願い。終わらせてほしいの」 できない。 「今日で終わりにしたいの」 「できない」 必死に言葉を紡ぎだした。 「…ふふ。初めて話してくれたね。でも、明日はもう、わたしは運命を共人のために生きることになるの。でも、選べなかった。だから、終わりにしたくって。あなたにそのお願いをしに来たの。ごめんね。本当なら…本当ならわたしと出会うこともなかったのに、巻き込んじゃってごめんなさい。でも、会えて嬉しかった。だからこそあなたに終わらせてほしかったの」 それでも、できない。と僕はまた否定した。 「…明日。いいかな?わたし、怖いんだ。自分で選んだのに、ひとりで死ぬのが怖い。どうせ死ぬなら、あなたに殺されて死にたい。だからわたしの誕生日の明日。またここで。それまでに決めておいてほしいの。無理は言わないよ。その時は…ひとりで死ぬから。それでいい?」 僕は首を縦に振った。
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