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すっかり目の冴えた僕は、静かに寝室を後にした。廊下に差し込む月明かりが、夜の静寂を演出するかのように足元を照らす。その光に誘われ僕は突き当たりのバルコニーへと出た。
日中の温暖さとは売って変わり、晩秋の夜風は肌に突き刺すように冷たい。それでいて纏わりつく重い空気は湿気を多く含んでいる。
「霧……でるかな……。」
寝室の時計は5時を回っていた。しばらくすれば東の空が白み始める。見上げた空はよく晴れていて、濃霧にはならないだろう。視線を落とせば生まれたばかりの霧がモヤモヤと地面を覆っていた。
「……もう、一週間だな。」
僕は一週間前から、毎日同じ夢を見ていた。
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