風花が舞う日に

13/16
774人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「帰って」 「咲良?」 誠真は意味が解らないと言った様子で、まだ私の機嫌をとるように触れてくる。 「さわらないで!」 ポロポロと涙が零れ落ちる。とうとう我慢していた雫がとめどなく溢れた。 「咲良……」 初めて見る、驚いたような、悲しみのよう、複雑な誠真の表情が目に映る。 どうしてそっちがそんな顔をするのよ。 そうは思うも、これ以上一緒にいても辛くなるだけだ。 その日から、卒業まで私は誠真んと話すことは一度もなかった。 誠真が卒業してから、風の噂でアメリカへいったことを知った。 大企業の跡取りとか、私をやっかみから守りたかったんだよ、とかそんな慰めの言葉などを聞いても何も変わらない。 誠真はもういない。 私の淡い淡い恋心はこうして、終わりを迎えた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!