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「龍翠、彪林!何をしている」
張引の、怒鳴り声。熱いものが、すうっと引いていくような心地がした。襟から、手を離す。張引と、紅成様も一緒だった。二人が、路地裏に入ってくる。紅成様の目が、つかの間俺を睨んだように見えた。生意気な目だ、と思った。
「まったく、こんな所で喧嘩などとはな」
張引が、皺の多い顔をしかめてみせる。幸い、会話の内容までは聞かれていなかったようだ。
「これから戻ります。白藍殿から頼まれた買い物も、終えたことですし」
龍翠が、何事も無かったかのようにそう言った。ちくり、と胸が痛む。先ほどの自分が言ったことは、一体なんだったのだ。怒りが込み上げてきそうになるのを、俺は必死に抑えた。
「行くぞ」
張引がちょっとだけ俺の方に目をくれ、踵を返す。最悪な気分だ。かつてないくらいに。
灰色に淀んだ空を、俺はじっと睨んだ。
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