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口をおさえて。
こほん――。
ごく普通の、一回きりの咳をした。
かちゃん――。
体の中で音がして。
手のひらの上に何かが転がり出た。
歯車が鎮座していた。
赤茶色に錆びた、小指の爪くらいの大きさの歯車だ。
それを見つめたまま、私はしばし固まっていた。
なんだこりゃ――。
歯車だ。
どこからこんな――。
私の体の中からだ。
どういうことだ――。
歯車が私の体の一部であったということだ。
――飲み込んだ?
そんな覚えはない。第一、体の中で音がしたのだ。それから転がり落ちてきた。
――かちゃんと。
何かが外れるような音だった。
――なんだそりゃ。
私は化物だったのか。
アンドロイドというやつか。
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