幕間「都九見の目論み」~なぞかけ勝負~

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「それじゃあさっそく第一問。 『と掛けて、と解く。その心は?』」  なぞかけとは、問答方式の言葉遊びゲームだ。  Aと掛けて、Bと解く――という出題に対して、解答者がAとBに共通する要素すなわち『心』を探し当てるのだ。同音異義語をうまく掛けていたり、ダブルミーニングが隠されていることが多い。都九見(つぐみ)さんが「古より受け継がれし高度で雅な文化」と日頃から言い上げている駄洒落にも似ている。発想力や閃きが肝心な、頭の体操だ。 「たこ焼き、と新聞紙……共通点か」 「焼く、食べる、読む、折る……うーん?」 「そうそう。そんなふうに順に連想しながら考えていくといいよ」  目の前で温まっているたこ焼きを見つめながら懸命に頭を捻るぼくらを、出題者の都九見(つぐみ)さんが含み笑いで見守っている。  新聞紙、か――。  准教授からのおつかいで、万世(まよ)先生にぼくが届けた最初の『呪いの品』も、今はもう存在しないカルト集団が作り上げた、世界を呪う禍々しい新聞紙だった。思えばあれが、先生との出逢いのきっかけになったのだ。 「そういえば。うちの万世(まよ)先生が今度新聞に載ることになったんですよね。ローカル誌ですけど」 「マジ! 新聞デビューじゃん、カピ!」 「へぇ。何かきっかけがあったのかい?」 「先日(かさね)山の『かさねまつり』の事件に巻き込まれた時、恒河社(ごうがしゃ)って出版社の記者さんとたまたまお知り合いになったんですよ。八壁(やかべ) 六美(むつみ)さんっていうライターの方なんですけど。今度うちに取材に来たいって申し出がありまして」  名刺交換の後、ほどなくして事務所に連絡が来たのだ。 「数多町(あまたちょう)で活躍している人を紹介するコーナーなんですけどねー。是非おたくの七十刈(なそかり)先生のことを取り上げたいんですよ!」と熱く語ってくれた。探偵舎の宣伝にもなるし、先生の素敵なところを町内の人に広く伝えられるまたとない機会だ。 「恒河社(ごうがしゃ)ってアマタナビのところじゃん!」 「そうそう。アマタナビの。隅のほうの小さな記事らしいんだけどね。ん、記事……? きじ……あっ!」  脳内に閃きが走った。 「分かりましたよ、ツグセン!  たこ焼きと掛けて、新聞と解く。その心はーーどちらも『キジ(生地・記事)』が命ってことです!」 「ご名答。少し簡単すぎたかな?」  昨日の晩、一生懸命自家製粉作りに勤しんでいたぼくなので、実感として分かる。ぼくと五夢(いつむ)はハイタッチをして、ひとまずの勝利を讃え合った。 「やったじゃんミル。あと二問! さくっと解いてツグセンの口の中炎上させようぜ!」
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