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「続けようか。第二問。
『たこ焼きと掛けて、プログラミングと解く。その心は?』」
「またたこ焼き?」
「せっかくだからね。目の前にあるもののほうが、君たちも思考しやすいだろう。私からのサービスだよ」
そんなに余裕綽々で良いのだろうか。こちらは頭の柔らかい大学生の若者が二人も集まっているのに。
「さっきのパターンで連想しよ!」
「そうだね。でもぼくたち文系だからプログラミング用語なんてあまり詳しくないよね……」
「私だって文系男子だからねぇ。そこまで難解な専門用語は出さないさ」
「ちょ、待。三十五歳って男子か?」
「男子男子♪」
女子会みたいな鬱陶しい男子トークを繰り広げている。
「プログラミングかぁ――そういやさ。前にFIVESのサーバーが落とされたアレ。結局有名な【Zebius】っていうハッカー集団の仕業だったんだって。犯行声明出てたって。うちの大学なんか狙ってどーすんだろね」
そのニュースならぼくもネットで見たことがある。原因不明のダウンかと思いきや、ハッカー集団による【STAGE CLEARED】というふざけた声明画面がトップページ上に大きく出てきて当時大騒ぎになったのだ。
「あの時はびっくりしたよね。ログの大半が吹っ飛んだおかげで、ぼくと五夢の変な噂も有耶無耶になってくれたから助かったといえば助かったけど……」
「目的も構成人数も本拠地も不明の謎のハッカー集団! まじ存在自体が都市伝説だよなー。しかも情報を盗ることが目的じゃなくて、愉快犯らしい。すげぇ技術を駆使してセキュリティに欠陥があることを証明するのを純粋に楽しんでるとか何とか」
「そりゃあそうさ。だって――【Zebius】も新しく定義された『なぞ筋』のひとつだからね」
都九見さんがさらりととんでもないことを言い出したので、ぼくは驚いて「えっ!」と大声で叫んでしまった。何も知らない五夢がきょとんとした目でこちらを見てくる。
――『なぞ筋』とは。
歴史の表裏で活躍してきた、謎を解くことに特化した特殊な一族、流派、系統などの総称のことだ。ぼくがお世話になっている七十刈 万世先生も『謎=儺詛』、すなわち真実を覆い隠し分かちがたい形と成り果てた呪詛と定義して、呪術的解法を試みる『なぞ筋』の一派なのだと以前ミステリーナイトで聞かされていた。
「実はここだけの話――私、【Zebius】のメンバーと個人的な知り合いでね。こんな研究をしているものだから『筋の者』の話を聞くことも少なくないんだよ。彼らの場合『謎=コード』と定義してそれを突破することに存在意義を見出しているのさ」
「へぇ~。よく分からないけどツグセンの交友関係エグいのは分かった」
世の中には、想像以上に多種多様な『なぞ筋』が存在しているらしい。探偵一族、謎解きアミューズメント集団、鍵師――おまけにハッカー集団まで。気の遠くなりそうな話だ。
「さて。問題のほうにも集中しておくれよ」
「分かってるって! プログラミングだろ?」
大学の一般教養の『情報処理』の授業で習ったプログラミングっぽい単語を頭の中から絞り出す。プログラム、システム、コード、キャッシュ、メモリ、データ、セキュリティ、プロパティ、ソフトウェア、バグ、ソース……ん、待てよ。これはもしかしたら。
「分かりました。たこ焼きとかけて、プログラミングと解く。その心は――『ソースが肝心』! どうです、当たりでしょう」
「大正解♪ さすがは優秀な我が教え子」
「やるじゃんミル! ボクもあとちょっとで閃くとこだった!」
「はいはい」
唇についたソースをぺろりと舌で舐めとりながら、准教授が満足気に微笑んだ。
残すところ、あと一問。
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