第九話「あかしや」~謎だらけのテーマパーク~

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 レストランで早めの昼ごはんを済ませたぼくらは、さっそくメイン会場である『アカシックパレス』へと向かった。既にお城の外にまで長い待ち行列が形成されている。そのまま先生が列の最後尾に並ぼうとしたので呼び止める。 「先生、こっちですよ」 「皆さんと一緒に並ばないのですか?」 「えぇ。この券がありますから」  列の横をさっとすり抜け、『エクスプレス入場ゲート』へと歩を進める。実は入り口で既にエクスプレス・パス――並ばずに入れる有料のアトラクション券を二名分確保してあったのだ。  ぼくとしては先生と過ごす待ち時間ならちっとも苦ではないけれど、人の多い場所に不慣れそうな万世(まよ)先生をこんな形で消耗させてしまうのは得策じゃない。懸念要素は出来る限り取り除いておきたい。お金に物を言わせて。  近頃では『七五三(しめ)家』の資金力を行使することに対してもさして抵抗感が無くなってきた――順応してきてしまったのかもしれない。どのみち父が「お金も人も自由に使っていい」と承諾してくれているのだから、遠慮などせず使えるものは大いに使ってしまえばいいのだ。 「さぁ、先生。このまま中へ入りましょう」 『ナゾトキ勇者王と呪われた迷宮城』と書かれた巨大看板を抜け、石造りの廊下が続く城内へと歩を進める。  道中にモニターで説明が入る。魔法使いみたいな石像のおじいさんが喋りかけてくる。 『ナァゾナゾー。わしは魔導士ペグシル。  おお、生きておったのかーー聡明なる勇者王たちよ! そなたの城は魔王ザオンの軍勢に占拠され、謎と迷宮の呪いをかけられてしまった! わしらも謎が解けず、この通り石に変えられてしまった。  このままではナゾガスキ王国は滅びてしまうだろう。  行け、勇者王よ。覚悟を決めるのだ。  わしはもう石になって動けぬが、わしの力を込めた武器を授けよう。いずれ怪物を打ち倒す力となるだろう。  同行者とパーティーを組み、道中の謎や仕掛けを解いてゴールを目指してほしい。手に入れたアイテムを注意深く紐解き、正しい行き先を導き出せ。そなたの辿り着いた先に、ナゾガスキ王国を救うための手掛かりが見つかるであろうーー』  渡されたのは小ぶりの木製杖型ペン。丸い宝玉のついた木の枝のような見た目だ。筆記もできるしボタンがついていてハンディライトにもなっているようだ。  受付にある石版型のタブレットにひらがなでニックネームを入力させられる。先生が「たんてい」と打ち込んだので、ぼくも合わせて「じょしゅ」と入れておいた。  そのまま暫く進んで行くと――『王の間』と書かれた扉。その先にあるライトアップされた豪華な玉座に座っているのは、緋色のマントを羽織り、長いひげをつけ、頭に立派な王冠を乗せた『王様』らしきおじさん。  作りものではなく人間の役者が演じているようだ。ぼくらの前にいた男女カップルに向かって、 「ナァゾナゾー! これはこれは。「ゆうだい」と「みく」か。初々しい二人じゃのう。デートかのう。仲良く楽しく謎まみれの城で迷いまくるがよいぞ。ほっほっほ」  などと気さくに話しかけている。客イジりに余念がない。 「次のそなたらは「たんてい」と「じょしゅ」? ――はて、こんな所で潜入捜査かのう。おおこわいこわい」 「ーー今はです」 「面白い奴じゃ。ほーっほっほっ」  長いひげを撫で付けながらけたけたと可笑しそうに笑い転げている。 「さて。そなたらに『ぼうけんの書』を授けよう。  受け取ったら次の部屋で中身を確認し示された場所へと進むが良いぞ。そーれナァゾナゾー」
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