第十一話「のぼりりゅう」~二月 五夢の告解~

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 今日は古着屋バイトも読者モデルの仕事も休みだっていうのに、遊んでくれる相手が誰もつかまらなかったので、仕方なくいつも遊んでいる大学のトモダチーーミルミルこと七五三(しめ) (ミル)の家に向かう。  正確には(ミル)の家というより、彼が住み込みで働いている自称探偵のナソカリ マヨ先生――ボクは勝手にカピとかマヨセンって呼んでる。だって食べてるとこカピバラっぽいし――の事務所だ。ミルミルの家は隣町にある大豪邸なのに、色々あってそこから逃げてきたらしい。家庭の込み入った事情はちょっと聞きづらくて、流石のボクでもまだちゃんと聴取は出来ていない。  ともあれ今日はヒマを持て余している。ミルはなんだかんだ言って良いヤツだから突然訪ねて行ってもきっと構ってくれるだろう。日本人とフランス人とのハーフだという我が友人は、百七十八センチの長身を持つ金髪碧眼の王子様イケメンなのに、どこか人を遠ざけているようなところがあって、カノジョも居なければ大学で仲のいい友達も殆どいない。作るつもりもないらしい。積極的に絡みにいくのはボクくらいだ。めちゃくちゃ勿体ない。  道すがら迷宮通の住人たちに次々声を掛けられる。  我ながらコミュ力には自信があるので、もう何度もここに通っているうちにすっかり顔見知りだ。ギターをかかえた物乞いのおっさんは話してみれば音楽通の面白いヤツだし、ディープな話題を色々持っている。  道端に店を構えてビール箱の上で水晶を覗き込んでいる占いばばあには、いつも呼び止められる。一度気まぐれに占ってもらって以来。いい客だと思われているのだろう。 「おい、五夢(イツム)や。占っていかんか」 「今日はいいわ」 「物凄い龍が視えるぞ」  このばあさん、ボクの二、三日後の未来を当てやがったこともあるからひょっとした何か視えてるんじゃないかとうっかり信じかけてはいるけど。占い師ってのは相手の顔色を探りながらそれらしいこと言って調子に乗せるところもあるから、油断ならない。「占っていかんか」くらいの時は特に何もないのだと思うことにしている。  そうこうしているうちに。  迷宮通(めいきゅうどおり)の一番奥の奥。  このへんのオカルト好きなら誰しもが知っている――呪いを解くのが専門の探偵事務所『七十刈(なそかり)探偵舎(たんていしゃ)』に到着した。
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