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「えっ、何? 壺開いちゃったけどどうすればいーの?」
「二月君、今すぐ下がって!」
短く叫んでお札を構えたカピと、爪を出したオクラちゃんがすぐさま前に躍り出てくる。壺に向かって――正確には壺から出てきたっぽい何かに向かってどこの言葉かよく分からない変な呪文を唱えながら、狭い部屋じゅうを跳ねたり転げ回ったりしている。
「――く、動きが素早い……億良、そちらから回り込んでください」
「……シャーッ!」
筋力は強いものの何も視えないボクは、カピバラ先生とオクラちゃんが正直羨ましい。このセンセーは普段から呪いを解いたり怨霊を祓ったり出来るみたいだし、動物は五感が鋭いから霊的なものが視えるらしい。ボクにもそういうものが視えたなら、SNSで怖い話の体験談じゃんじゃん書いてアップしまくるのに。心霊スポット訪ねてガチ動画上げまくるのに。みんなオカルト好きだもんね。今以上に色んな層から人気が取れるに違いない。
そんなことを考えていたら、ついその場から逃げそびれてしまった。
「二月君! 後ろ!」
とマヨセンが叫んだので後ろを振り返るが、当然何も視えない。さっきまできょろきょろと眺め回していた倉庫の光景だ。
「何も無いけ、ど――……」
そう言おうとした時。
思いっきり首が絞まるような感じがした。
――首元に何か太いものが巻き付くような感触。ぎりぎりと頸動脈を絞めつけられるような特有の苦しさ。
おいおいおいおい。マジかよ。
「ッ――……な、に……――!?」
息が出来ねぇ。
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