幕間「ベストフレンズ」~ぼくと君の隠し事~

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 数多(あまた)商店街に向かう道すがら。 「今度さ。新しくうちのバイト先の近くに出来たカフェ行ってみようよ! 可愛い()え系のパフェとスムージーが出るって評判なんだよねー。ミルミル確か甘いもの好きっしょ? 行くしかないって!」  と、お喋り好きの二月(ふたつき)が調子よく喋っている。  彼は一見悩みなんて無さそうに見えてちょっと羨ましい。竹を割ったようなはっきりした性格だし、くよくよ悩むなんてしなさそうだ。いつもキラキラした楽しそうなツイートでSNSを賑わせているし、五夢(いつむ)のそういう姿に惹かれて集まってくる人は大勢いる。どういう人生を歩んで来たら、こんな明るい人気者になれるんだろうか。  自分の生い立ちや体質のことを思い返してしんみりしてしまった。 「そういえば、事務所で何してたの? 先生と」 「あぁ、それそれ! 話しかけたところでツグセン来ちゃったからさー」  聞くと、彼は興奮気味に今日あった出来事を話してくれた。  なんと――霊感ゼロで、霊的なものが全く視えないはずの五夢(いつむ)が、素手で実体の無い呪念をのだと言う。  万世(まよ)先生のお墨付きだから間違いないんだろうけど――そんなことってあるんだろうか。 「それはまた凄いね! ちょっと信じられないくらい」 「とにかく。ボク、視えないけど殴れちゃういつむ~みん★だから!」 「鬼戒村(きかいむら)でも凄い動きしてたよね。ていうかずっと思ってたんだけど、五夢(いつむ)ってめちゃくちゃ腕力あるよね。力強いから、引っ張られたり肩とか叩かれる時に実は結構痛かったんだよ」 「え。あ……そっか、マジか。――ごめん」 「いや。そこまで気にしてないけど……?」  何気なく放った一言がどうも五夢(いつむ)の中で引っかかったらしく、ほんの少し口数が少なくなってしまった。  商店街に到着したぼく達は買い物を済ませ、先生達の待つ探偵舎へと急ぎ足で戻る。しっかり者の億良(おくら)もついていてくれるから大丈夫だとは思うけれど、あの准教授が、留守番にかこつけてまた先生に何か余計なことをしていないか急に心配になってきてしまったのだ。  うまく説明出来ないけど、腹黒都九見(つぐみ)さんが先生に向ける態度はどこかじゃない気がしてる。一見平静を装ってはいるけど、ただの昔馴染みへ向ける好意だけではない、じっとりした薄暗さを肌で感じるのだ。気のせいだといいんだけど。  五夢(いつむ)もそんなぼくの心境を読み取ってくれたらしく、軽やかなはや足でついてきてくれたので、どうにか最短時間で我が家に戻ってくることが出来た。 「うっし! みんなでしゃぶるの楽しみだよね!」 「略し方が何かヤだなぁ……」 「じゃあシャブパーティー」 「余計に駄目だよ!」  玄関先でボケとツッコミを掛け合って二人で笑い合う頃には、すっかりいつものぼくらに戻っているように思えた。
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