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「あ。ここだここだ」
性格の悪い製作者がお遊びで作ったダンジョンみたいな不気味な路地裏を必死で通り抜けた一番奥の奥に、その独特な日本家屋はあった。
廃墟みたいな木造平屋建。『七十刈探偵舎』という看板が立てかけてある。中から明かりが漏れていなければ入ることさえ躊躇しそうな雰囲気がある。
インターフォンを探すも見当たらないので、仕方なくガンガンと戸をノックする。いまどき原始的すぎるだろ。
「ごめんくださーい……うわっ」
大声で呼んでみたら、いきなり戸の中からめちゃくちゃキレイな外人の金髪碧眼男が出てきた。予想してなかった。戸惑うわこんなの。
「は、ハロー? ハウドゥーユードゥー?」
「あ、日本語でいいですよ。もしかして依頼人の方ですか?」
なんだよそれ。とりあえず日本語が通じるらしいことと、こちらの用件を察してくれたことにほっとする。こんなところに置き去りにされたくはない。
「そうなんすよ。ここに呪いの専門家の方が居るって聞いて」
にかっと笑うと、金髪の青年も『大好きな昆虫標本を他人に見せびらかす少年』みたいな顔で、うつくしく微笑んだ。
「ええ、いらっしゃいますとも! うちの七十刈 万世先生は凄いんですよ。さあさあこちらへ」
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