第十三話「わたしはだれだ」~夢に出る女~

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 夕方になるのを待ってぼくらが向かったのは――数多町(あまたちょう)南西部。大学通にある、この町唯一のコンビニエンスストア。  いつも利用している『デイリー八ツ崎(やつざき)』だ。  万世(まよ)先生は足早にレジカウンターに駆け寄り、中にいる小柄な女性店員さんの名札をちらりと確認すると、白くて細長いをびしりと突き付けた。 「――いらっしゃいま、せ……?」 「ええ。いらっしゃいました。これを二月(ふたつき)君に渡したのは――貴女ですね」 「!? どうしてそれを――!」  紙切れの正体は――コンビニのレシート。  昨日、五夢(いつむ)の財布からこぼれ落ちたのを――ぼくが何気なく拾い上げていたものだ。ぼくたちの――正確にはじっと黙りこくったまま後ろにいる五夢(いつむ)の姿を見て、店員さんが明らかに動揺した表情を見せる。  万世(まよ)先生はぼくに一瞥をくれると、 「――僕の助手が拾ったものです。  二月(ふたつき)君のお財布からも複数枚発見しました。ここで働いている貴女は、常連客である二月(ふたつき)君が、財布にを溜める癖があるのをよく知っていた。その癖を利用して術の実行を思いついたのでしょう。  ――まさかの裏にこんなものを書き付けるとは」  ぴら、と裏返すとレシートの裏に指の裏で急いで擦ったような、複雑な一筆書きの文字が大きく書かれていた。 「――持たせた相手の夢を縛り、生霊を飛ばす、ですね」  ぞわり、と背筋に寒いものが走る。  レシートをわざわざ裏返して見る人間なんてそう多くない。知らないうちに五夢(いつむ)は、呪いの核となるものを自らの懐に引き入れてしまっていたのだ。  財布は基本的に肌身離さず持ち歩くもの。その中に仕掛けたことで、相手がどれだけ居場所を変えたとしても関係なく辿ることが出来たに違いない。  だからぼくがズボンのポケットにしまったのをすっかり忘れたまま過ごした日の夜――レシートを持つぼくの元にも、生霊の念の一部が飛んできてしまったんだろう。  そうか――。  ぼくは点どうしが繋がるのを感じた。  日常風景の一部としてすっかり見過ごしてしまっていたけれど、この女性店員さんもよく見れば長い栗色の髪を後ろでぎゅっと一つに束ねている。挨拶の声も――放課後の買い物の時に聞き慣れている。  だから夢の中で女性の声を聞いた時、妙に聞き覚えのある感じがしたんだ。 「何故こんなことを。二月(ふたつき)君を、苦しめたかったのですか」  詰め寄る先生の顔を、店員さんがひどく恨めし気に睨み返す。   「
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