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「――『窃視』の呪、ですって!?」
「カピそれマ? けどセッシって何?」
「覗き見のことだよ、五夢」
ぼくと五夢は、体調不良のことも忘れて跳ね起きた。いつの間にか億良も先生の傍に寄り添っている。一気に緊迫した空気が流れる。
「……えぇ。
一見崩してあって分かりづらいですがしーるの紋様の中に印が巧みに仕組まれています。呪として成立しうるぎりぎりの水準で組んである。呪を熟知している者の仕業です。
術者が『視たい』と望めば、近辺に居る者から吸った生命力を使って、しーるに描かれた目を通して周りの光景を『視る』ことが出来る。
「じゃあ、メメメシールが世の中のみんなに広まってしまえば――」
「……えぇ。このしーるを仕掛けた術者の、視える景色が増えていく、というわけです。さながら拡散する監視かめらですね」
「うげっ、何それえげつねーな……」
途方もない悪意に、肌がぞわりと粟立つ。
『メメメシール』は『マジナイチャンネル』の公式グッズだ。
どんな人間が――何の為に。
『マジナイチャンネル』って一体なんなんだ。
「……先生。実は先程『マジナイチャンネル』のスクリーンショットを手に入れたので、お見せしようと思っていたんです――」
オカ研のメンバーに撮らせてもらったスクリーンショットの画像をお見せする。カラフルな手袋を嵌めた手。白い紙に書きつけられた――夢を縛って生霊を飛ばす、呪符。
万世先生の横顔が、みるみる強張る。
どこか思い詰めたような切羽詰った表情は――以前、先生に骨董市で見つけた虫眼鏡の写真をお見せした時のそれと、とてもよく似ていた。
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