第二話の裏「ときねこ」~消えた猫たち②~

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 アマタ町は南北に『(とおり)』、東西に『(すじ)』と呼ばれる道が走っている。人間の年寄たちが用いるの盤面のような形をしているのを、商店街の立札で見たことがある。東西の道は、北から順番に一の筋、二の筋、三の筋……という呼称がつけられており、九の筋まである。  数字が少ないほうがいわゆる『飼い猫』の多い高級住宅地となっており、数字が増えるにつれて、人も猫も減っていき治安が悪くなる。六の筋以南は粗悪地帯と呼ばれており、普通の猫はあまり近寄りたがらない。  ちなみに私の現在棲んでいる『迷宮通(めいきゅうどおり)』にだけは『筋』の番号が無い。数字としては『七の筋』付近のはずだが、どうもあのへんだけは区画整理が出来なかったらしい。全て『番地』で呼ばれている。一番奥が探偵舎のある一番地だ。 「本当にこの町は奇妙で、興味深いな」  隣に居る誰かに語りかけるかのように、私は独り言を呟く。相棒が元気で居てくれた頃の名残か。つい癖になってしまっている。  さて。二の筋で最後に目撃されたツクモだが、猫通りの多い一の筋では不自然なまでに情報がなかった。となると、南へ下がっていったことになる。どうにも危険だ。  私はしなやかに路地を駆け抜けると、六の筋方面へと向かった。
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