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恐怖で唸り声を上げそうになるツクモの口元を咄嗟に押さえて制止させる。外から断続的に聞こえてくる叫びは、ほどなく呻きに変わる。ズル、ズルと何かを引きずるような音。
この部屋にやって来た人間以外の『何者か』が、扉の外に居る。動物の勘がそう告げている。しかし、妙だ。五感を研ぎ澄ませても、それが一体何者なのかうまく探り当てることが出来ない。人間なのかそうでないのかさえ分からない。懸命に捉えようとすればするほど、何故か対象の気配が幾重にもぶれてしまうのだ。
「え……この感じ――」
「どうしたツクモ? 何か感じるのか」
垂れていた耳をぴんと立て、ツクモが呟いた。
「わかんないけど……ねぇ、みんな、どうしてそこに居るの? どうして、もう居ないはずなのに、どうして」
おろおろと取り乱し始める。
「落ち着け。みんなとは誰のことだ。まさか――」
「みんなが――。
ぼくと一緒にさらわれてきた子たちが、そこに居る――」
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