第七話「ともだちのさいご」~悪魔の子~

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 幸いその子は軽傷で済んだと聞かされた。  学部棟の二階に吊るされていたベニヤ板のイベント看板が、突然落ちてきたらしい。  その後も。  何故か学内での事故や事件が続いた。  通りすがりの不審者に怪我をさせられた、自転車にはねられた、資料室の棚が倒れてきたーーなどなど。  騒然とする大学のSNSーーFIVES(ファイブズ)のタイムラインを物騒だなぁと眺めていたら、ぼくはあることに気付いてしまった。    奇妙なことに。  巻き込まれている子たちに覚えがある。どうやらぼくに告白してきた女の子達ばかりなのだ。 「いやーーまさかね」  偶然が重なったのだろう。  そう思うことにしてスマートフォンの画面を閉じ、ノートと課題の文献を取り出した。そろそろ午後の語学の講義が始まる時間だ。 「ねぇ七五三(しめ)君、だよねーー隣いい?」 「うん、どうぞ」  座席は自由なので、同じ学部と思わしき女子が最前列の隣席に座る。やたらとねっとりした視線を感じる。何となく授業内容に集中しづらくなったぼくは、小声で尋ねてみた。 「……ぼくの顔に、何かついてる?」 「ううん。ねぇ、今日この後ーー時間ある? ずっと七五三(しめ)君のこと、気になってたんだよね。二人でどっか遊びに行こうよ」  ぴとり、と彼女がぼくの手に自分の手を重ねてくる。いつか母親が(まと)っていた粘着質な空気感が思い出されて、ぞわぞわと鳥肌が立つ。思わず気分が悪くなって反射的に席を立とうとした、その時ーー。  いきなりその女の子が、ガタンッと勢いよく机に突っ伏したのだ。 「え、ーー?」  見ると、白目を向いてぐったりと倒れ伏している。糸の切れた操り人形みたいに。さっきまで全く普通の様子だったのに、あまりにも突然。 「……き、救急車をーー!」  授業は一時中断となり。  駆けつけた救急の担架に載せられて、彼女はそのまま運ばれていった。  どういうことだ? 何が起きてるんだ? いよいよ思い過ごしでは済まされない何かを感じ取って、サイレンの鳴り響く中、ぼくはひとり頭を抱えていた。
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