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第十話「きかいむら」前編~鬼退治伝説と白装束集団~
『むかしむかしあるところに』
お決まりの語り出しで始まる昔話や伝承の数々。
あるいは語り部達の口伝として、あるいは書物の形で、あるいは碑文に刻まれ、またあるいは歌や踊りとして演じられてきた――伝説。
世にもおどろおどろしい化物、怪異、妖が縦横無尽に跳梁跋扈し、古の英傑達が伏つろわぬ怪の者たちを討ち果たすべく武勇と智恵を尽くして活躍する。そんな、恐ろしくも華々しい伝説はその地の誇りとして、戒めとして永く残され、時を超えて連綿と語り継がれてきた。
伝説は、間違いなく歴史を映し出す『鏡』だ。
一見現実離れした挿話の一要素一要素に、巧みに史実が融け込んでいる。
しかし。時として伝説は改変される。
生き残った者達の都合の良いように、歪められ、書き換えられる。
葬り去られた者の慚愧を、怨恨を、置き去りにして。
数多町七十刈探偵舎
第十話『きかいむら』
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