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幕間「かみにまつわる」その二 ~金銀相剋~
もうすっかり通い慣れた、放課後の研究室。
山に帰ろうとするカラス達の鳴き声が響く中、ぼくと担当指導員である都九見准教授は――机を挟んで向かい合わせに顔を突き合わせていた。
五月のツグミステリーナイトの時に約束して以来、空き時間が出来るたびにぼくはこうして大学で准教授の個人指導を受けている。民俗学の――とりわけ『呪い』や『この世ならざるモノ』といった分野について、ちゃんとした知識を身につけるためだ。
ぼくの雇い主であり同居人――七十刈 万世先生は、数多町で『呪い』や『なぞ』を解くことを専門とした探偵舎を営んでいる。つまりは呪術師探偵だ。その『助手』であるぼくが何も知らないというわけにはいかない。
都九見さんの教え方は、割と容赦ない。
講義の時も――内容自体は物凄く面白いのだけど、鬼のようなレベルのレポートやテストを課してくる。おかげでやる気の無い学生は回を重ねるごとに振り落とされていき、民俗学を愛する真面目な精鋭達だけが生き残っている。
個別指導となると、さらに手厳しい。
今のぼくにとってはやや難しめの課題を次々に与えられて、休むことなく必死に考えさせられる。我が子をわざと崖から落とし、登ってくるのを見守るライオンの子育てのようだ。しっかり頭を働かせないとついていくことすら難しい。
けど――そのくらいが今のぼくには丁度いい。
ぼくは、もっともっと成長しなくちゃならないのだから。
先生の助手として。一人の人間として。
数多町七十刈探偵舎
幕間「かみにまつわる」その二
『金銀相剋』
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