第六話「かさねまつり」~惨劇の夏祭り~

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第六話「かさねまつり」~惨劇の夏祭り~

  数多町七十刈探偵舎   第六話『かさねまつり』  生まれた時から、彼女と私はずっと一緒だった。  二人が共に在るのが運命なのだと、そう直感していた。  彼女は――小さい頃から、楽しいものが好きだった。  私は彼女を楽しませるために、山でとれた枝や葉を使った手作りのおもちゃを作ってやった。なかなか眠れないとぐずる夜には絵本を読んでやった。暑くなる頃には美しい音色の風鈴を窓辺にかけてやった。  そのたびに彼女は、小さな手で私の指を握りしめ、花びらが綻ぶように無邪気な笑顔を見せてくれた。  私は。立場を忘れていつしか彼女を深く愛し始めていた。  一人の男として。  日々の業の合間をぬって影のようにひっそりと彼女に付き従い――いつだって傍で見守り続けていた。日だまりのように。姫に寄り添う騎士のように。彼女に近付こうとするあらゆる良からぬ者たちを、寄せ付けぬ為に。  しかし。――残酷な試練は唐突に訪れた。 「ねぇ。XXXX。喜んでちょうだい。  わたし、縁談が決まったわ。お父様が素敵な方を見つけてくださったの。しかも――この神社を継いでくださるって」 「なぁ――XXXXも理解してくれるね。  お前もあの子も、もう年頃の大人だ。お前はこの山を下りて、ここではない場所で生き甲斐を見つけなさい。なぜなら、お前は――……」  自分達の縁を引き裂こうとする、何もかもが。  何より私を置いて変わっていってしまう彼女が、許せなかった。  私は、彼女を――無垢なる彼女の笑顔を、魂を留めておきたかったのだ。  この場所に、永遠に。  手を血まみれにして、私がその場に立ちすくんでいると、何者かが気配も無く背後に佇んでいることに気が付いた。 「――強い思念に引かれて来てみれば。オヤオヤ、可哀相に」 「……誰だ」 「永遠に、成りたかったんでしょう? アナタ」  その者は目をニィと細めてこう言った。 「ずっと彼女のことを、大切に想ってきたんでしょう。  アナタの想いが本物ならば、その想いごと封じ込めては如何(いかが)でしょう。ワタシなら、アナタの願いを叶える方法を知っていますよ。ただし他言は無用です。命尽きるまで永遠を誓えるならば、特別にお教えしましょう」  私の腹は既に決まっている。  だが――突然現れたこの怪しげな人物を信じても良いものか。 「ワタシを疑っていますか? それならばお教えしても無駄でしょうね。この話はなかったことに。これにて失礼」  私は――。  踵を返そうとした男を、引き留めてしまったのだ。  それが、七年にもわたる――私達の大がかりな『儀式』の始まりだった。
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