猛暑注意

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彼らが脱いでる間にうつむいてさっと出れば良かったし、いつもならそうしていた。寝起きで頭が回っていなかったのと気を抜いていたことで出遅れてしまって、あっと思ったら扉が開いていた。 「あっちー!今年まじやべーな」 「それな。今年こそ生き残れねーわ。お前らじゃあな」 「ご愁傷様でーす」 ちょうど積み上げられていた洗面器に隠れて入って来た人たちを確認する。入寮の挨拶で見た以来の、たぶん2年の先輩たち。余裕のあるスペースを満喫するように広く距離を取ってそれぞれシャワーの前に座った。浴槽は扉から見て奥で、シャワーは壁を向くように両側。洗面器は斜めの視線からは隠してくれそうにない。 頭を洗っている時にでも出ようと様子を窺うけれど、見事に全員違う部位から洗い始めたので困る。洗い終わって正面から見つかるよりは、いっそ視界が悪いうちに堂々と出ようと開き直って腰を上げた瞬間、よく知った人影が見えたのですぐに湯船に沈んだ。 「健助……!」 眩しい時にするみたいに手で目線を遮りながら呼ぶと、小声が聞こえる距離ではないのに、フードの代わりにタオルを目深に被った健助が瞬時に俺を見つけてくれた。困ってるのが分かるのか真っ直ぐこちらに向かってくれる。 「おい待て。まさか体を洗わず入るつもりか?」 「マナー違反だぞ」 「行儀が悪いな」 だけど先輩たちのすごく真っ当な言葉に足が止まる。少し迷ってるようなので、「後で大丈夫」と口パクで伝えると、近くのシャワーを使って雑に体を洗い始めた。とりあえずこれでひと安心。 「うわ!」 「なんだよ急に」 「もう一人居た!」 ……と思ったら結局見つかってしまった。
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