猛暑注意

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いよいよ文化祭の準備期間に入った。教室をお化け屋敷に変えるためにまずざっくり必要な物を書き出して、授業の一環という体で手分けして学園の外でそれらを調達することになった。 今は桐嶋を含めた数名と、リヤカーを2台引いてスーパーに段ボールをもらいに行く最中。 「あ、猫」 車も人もあまり通らない道でふらっと現れた黒猫が、俺の足元に擦り寄ってきた。マーキングするみたいに頭を何度か押しつけた後見上げてにゃあ、と鳴くので撫でさせてもらう。 「ずるい……」 猫好きらしいクラスメイトが恨めしそうに言うので、たぶん大丈夫だよと声をかけたら恐る恐る撫でに来た。猫が逃げなかったので、クラスメイトは顔をゆるゆるにしながら喜んでいる。良かったね。 「堰は動物に好かれるタイプ?」 桐嶋はさほど猫に興味がないようで、猫じゃなく俺を見ながらそう聞いてきた。 「猫と犬には好かれる方かな」 志常の敷地に住み着いている猫さんとも友達だ。そう言えばもしかしたらこの子の匂いを嫌がるかもしれない。帰ったら洗濯しないと遊んでくれないかもな。 「堰って猫っぽいもんな」 「そうかな。桐嶋は犬っぽいよね」 「よく言われる!」 人懐っこくて元気で遊ぶのが大好きな犬種っぽい。あんまり詳しくはないけど、イメージ的にボーダーコリーとか。そんな話をしていると猫は突然するりとどこかへ行ってしまった。 「あー行っちゃった。ありがとう癒し」 猫好きのクラスメイトが猫が去っていった方向に手を合わせている。みんなは馬鹿にしたりせず良かったなと声をかけている。 「そんなに良いかな。俺はこっちの方が好き」 そんな中でそう言って突然桐嶋が俺の頭を撫でたのでびっくりした。びっくりした俺を不思議そうに見て、なんでもなかったみたいに「よっしゃ段ボール調達再開!」と元気にリヤカーを引き始めたけれど、今のはなんだったの。
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