帰宅後

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「もちろん、全然平気! 車の運転だって理人(りひと)に任せっきりだったし、私に疲れる要素なんてないよ?」  そう言って微笑むと、ようやく彼はホッとした顔をした。  お互いに相手のことばかりに気を取られていて……それが何だか自分たちらしいな、と思ってしまった。 「……ねぇ理人。本当にこのままうちに寄るの?」  ふと思い出してそう問いかければ、「うん、そのつもりだよ」と答えが返る。  新幹線を降りてすぐ、理人に(うなが)されて自宅へ電話を掛けると、私が帰宅する日ということもあってか、皆在宅しているとのことだった。  それを確認した理人が、「だったら僕も少しキミのご家族にご挨拶がしたい」と言い出して――。 「……え?」  それは、旅館での朝食の時に理人(りひと)から提案されたことと繋がる気がして、私は少し驚いてしまう。 「心配しないで。いくら僕でも今日どうこう言うつもりはないよ。――ただ、少しでも心象を良くしておきたいだけだから」  理人は、そこまで言うと、「僕は臆病だし、(ずる)いところがあるんだよ」と付け加えて微笑んだ。  多分理人が申し込めば、うちの家族は誰一人反対しないと思う。  理人のご家族とも、私たちが幼い頃から家族ぐるみのようにして付き合ってきたし、今更反対はされないと……思う。  それでもやはり、周りも含めて自分達自身にも大きな変化をもたらす内容だけに、私は緊張してしまう。  もちろんそれは理人にしたって同じはずなわけで。 「僕にも支度する時間が要るし……それは葵咲(きさき)にとっても同じだろ?」  まるで私の心を見透かしたように、理人がそう言って私の頭をくしゃりと撫でた。 「心配しないで。ちゃんと時間、かけるから」
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