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imagine all the people
想像してごらん、世界から争いも、飢えることも、宗教もなくなって、みんなが仲良く暮らせる世界を……
僕は夢想家だろうか、でも、みんな同じようなことを感じているはず。
そして、世界はひとつになるんだ……
オサム・テヅカ、フジオ・フジコと並ぶ、20世紀最大の予言者ジョン・レノンは音楽という手段で、このような予言を残した。
彼は自分のことを夢想家だと、謙虚に語っているが、「人が思いつく物は必ず実現できるものだ」という格言どおり、人類の科学は夢を実現させて行った。
22世紀に入った頃、人はガンを克服し、23世紀にはあらゆる病気を克服した。
また24世紀を迎える頃には、STAP細胞イプシロンバージョンにより、再生医療が実現し、人はケガによって失われた臓器や肉体の一部を再生できるようになった。
クローン技術についても24世紀に完成。
さらには人のゲノムがすべて解明され、遺伝子操作によって、好きな容姿や体格に生まれ育つことも可能となった。
25世紀の頃には、老いることさえなくなった。
人は不老不死を手に入れた。
食糧については、22世紀の半ば、砂漠を緑地化することに成功。
23世紀には天候のコントロールさえ可能となり、不作ということがなくなった。
また、完全食なる食べ物が作られ、栄養不足になることも、肥満になることもなくなった。
身体を鍛える必要もなくなった。
排泄さえ必要なくなり、消化器官が退化した。
人は飢えることがなくなった。
すべてが機械化され、人は働く必要さえなくなった。
まるで機械に育てられるペットのようなものだった。
知識は一瞬で記憶する仕組みが作られたため、学ぶことも必要がなくなった。
すべての物が簡単にコピーできるようになり、欲しい物はなんでも手に入るようになった。
芸術や文化は存在する意味をなくし、望んだ物はなんでも手に入るので、人は金を必要としなくなった。
光の速さで飛ぶロケットが23世紀には開発され、25世紀にはワープ航法が実現された。
人々は新たな刺激を求め、宇宙の果てまで飛び出すようになった。
しかし、26世紀には宇宙の隅々まで探検が終わり、人々は開拓精神を失った。
衣食住が満たされ、不老不死を手に入れたことで、宗教さえ必要なくなり、26世紀に人はついに争いをやめた。
世界はひとつになった。
皆が不老不死となることで、人は子孫を残す意味を感じなくなり、生殖機能と、それに伴う求愛行動を必要としなくなった。
人は愛を失った。
27世紀、退屈な日々に耐えられなくなった人は、新たなる刺激を求めたが、もう何も残っていなかった。
行ったことがないのは、死後の世界くらいだった。
人は死にたいと思うようになった。
予言者ジョン・レノンは「ゴッド」という曲で次のような言葉を残している。
僕は何も信じない。
自分だけを信じるよ。
夢は終わったんだ。
夢なんて、もう終わったんだよ。
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