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焼き鳥屋
●焼き鳥屋
SE・引き戸を開ける音
店主「いらっしゃ〜い!」
篤「ども!」
店主「ああ!たしか……宮下さん!」
篤「覚えててくれたんだ」
店主「覚えてますよ〜。
お仕事終わったんですか?」
篤「うん。長めの仕事もやっと終わった
し、ちょっと飲もうと思って。
ちゃんと軍資金も……。
あれ?いけね。こっちか。ん?
あれ?」
店主「どうしたんですか?」
篤「ちょっと待ってて。
ここじゃない。ここでもない。
ここにも……、あれ?
もしかして……」
店主「財布落としたんですか?」
篤「まさか……ちょ、ちょっと
来た道探してくる!」
店主「警察にも連絡しときましょうか?」
篤「まず!まず行ってくる」
SE・引き戸を開ける音
女医師「やめてください!
警察呼びますよ!」
篤「なんだ?!」
祝い人「白状せんか!
貴様、あの男のポケットから
何か抜き取ったろう!」
女医師「どうやってですか!?
おかしなこと
言わないでください!」
あ!すみません!不審者です!」
篤「さっきの……」
女医師「すみません!助けてください!」
○女医師、篤の体に身体を預け腕を絡める。その拍子に何かが落ちる。
女医師「助けて下さい!」
篤「これ……おれの財布……」
女医師「あ……いえ……、あの……
財布落ちてましたので……
届けに来たんです!
良かったです。
じゃあ、私はこれで」
篤「え?え?」
店主「……行っちゃいましたね」
篤「うそだろ〜……!?」
○しばしの沈黙
店主「ぷ……くくく……
あはははははは!」
祝い人「ふん!女狐め!」
店主「……だいたいわかりました。
そういうこともありますよ。
ぷ、くく……」
篤「笑いながら言うな!」
店主「あははは」
篤「……ったく!ああ。
……え〜と、どうも……。
あの、さっき財布を抜き取ったって
……」
祝い人「そなたを介抱するふりをして、財布
を抜き取っておった」
篤「あ〜……あの、ご親切に
ありがとうございます」
祝い人「礼にはおよばぬ」
店主「宮下さん、中、確認した方がいい
んじゃないですか?」
篤「そうだ。ちょっと失礼……。
お金は……大丈夫……カードも……
大丈夫か!あー、良かった〜……」
祝い人「なによりである。
500円玉の借りは返したぞ。
ではな。よしなに……」
篤「……知ってたんだ」
○祝い人歩いて行く
SE・腹の虫が鳴る音
篤「何?今の音?」
祝い人「ではな……」
SE・再び腹の虫の鳴る音
篤「……あの、おじさん。
もしかして腹減ってる?」
祝い人「……さて?まぁ、減ってないことは
ないがのう……。そなたが財布の
お礼に礼にどうしてもワシにご馳走
したいと言うのなら、特別に
つきあってやっても良いが……」
SE・さらに腹の虫の鳴る音
篤「おじさん?」
祝い人「……まあ、どうしてもと
言うのなら……」
篤「わかった!おごるから!
おごらせていただきます!
どんだけツンデレなんだよ……」
店主「……まあ、どうぞ!」
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