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花田京子は孫のいる年齢だったがヨガをやっているおかげで、周囲からそんな年に見えないと言われる。
彼女は土井耳鼻科で受付看護師長をやっていた。
現在は新人の青年ナース、葛西の面倒を見ているところだが、なかなか物分かりがいい。
京子は二十代の葛西青年の輝くばかりの若さ、細さ、麗しさに少し嫉妬しながら、隙を見ては目の保養をしていた。
しかし葛西はある時、中待合室の様子に気づいて余計な発言をした。
「友井さん、田中さん、マスクをしていないならまとまって席を詰めてください」
京子は面倒くさいことになったと思った。葛西を呼び出して注意する。
「ちょっと葛西君、勝手なこと言わないで」
「僕、とても合理的なこと言ってます」
葛西は天使のように笑って返した。
かわいがっていた彼の悪意のない裏切りに、京子は苛立って歯噛みした。
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