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私刑
彼女は葛西から目を背けると、さらにマスクなしで飛沫を飛ばしている中年男性患者を呼んだ。
「吉田さん、中待合室にどうぞ」
吉田も中待合室長椅子の最後尾を陣取った。
雪穂はまたインフルエンザ予備軍患者にサンドイッチにされている。
京子が安堵した時、葛西が言った。
「吉田さん、マスクをしていないなら前の席に詰めてください。桐谷さんは離れた最後尾で待っていてください」
京子は我慢がならなかった。
新人に詰め寄る。
「葛西君、あなたね、桐谷さんの何なの」
「僕とても合理的なこと言ってます。桐谷さんでなく患者さんのために発言したらああなります」
「ちょっとこっちに来なさい」
「はい」
京子は雪穂の死角まで葛西を呼び出した。
彼の前に仁王立ちして睨みつける。
「葛西、私のやることに口出ししないで」
「何故ですか」
「桐谷雪穂は普通じゃないの。万引き常習犯だから町から追い出すように警察に頼まれてるの」
「制裁の協力を一般人に要請する警察、おかしいでしょ。そういうの、警察の犯罪って言いますよ」
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