ダレニシヨウカナ

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「高三の夏休みが明けたころからかな、よく仲間と週末にドライブをしていたんだよね」  思えば、随分と自由な校風の学校であった。校則で免許の取得が禁止されていなかったので、興味のある生徒は十八歳の誕生日を迎える生まれ月が近づくと、教習所に通って免許を手に入れていた。中学から大学までの私立の一貫校であったため、内部進学で大学に進む生徒は受験勉強の必要もなく、存分に高校生活を満喫することが可能だった。文恵が属していたグループの仲間たちも内部進学組だったから、週末ごとのドライブを楽しむような余裕があったのだろう。事実、そんな噂はなんとなく耳に入っていた。 「湘南とか横浜とか、結構あちこち行ったんだけど、普通の遊び場は段々飽きてきちゃって。怖いもの見たさで、幽霊が出るって噂の『心霊スポット』みたいな場所にも行きはじめたの」  今の時代ならネットで検索すれば、全国津々浦々の心霊スポットが瞬時に出てくるだろう。しかし、ネットもスマホもないあの時代でも、そういった情報は人々の噂から知り得ることが出来た。「あそこ、出るんだってよ」などというまことしやかな話を、兄弟や友だちや先輩から聞かされた者は、恐々と、若しくは嬉々として、更にまたその噂を学校や塾、バイト先などの別の場所で話し、口伝えに広められていく。 「廃業したホテルとかレストランとかの跡地とか、閉鎖されたトンネルとか。真夜中に、懐中電灯持ってね。尋常じゃないでしょ?」  仲間と一緒だとつい強気になって、そういった行為がエスカレートしがちになるのは理解できる。赤信号、みんなで渡れば怖くない状態だ。 「んー、まあね」  苦笑い気味に同意する。実はあのころ、文恵たちの「心霊スポット巡り」についても知っていた。私が仲の良かった女子が、文恵たちのグループの竹中という男子に片思いをしており、彼女に、 「竹中君に今度一緒に心霊スポットに行こうって誘われたんだけど、どうしたらいいかな?」  と、相談されたことがあったからだ。 「言っとくけど、あいつらがやっている廃墟や私有地に勝手に立ち入る行為は、不法侵入で罪になるからね。捕まりでもしたら、お母さん泣かせることになるよ」  正直に意見を述べたところ、外部受験を考えていた友人はさすがに慎重で、実際には彼らの心霊ツアーには参加をしなかったのだが。 「今にしてみれば、刺激が欲しかったんだと思うんだ。けど、結局どこも暗かったり古かったりちょっと薄気味悪かったりするだけで、特に怖い思いをすることはなかったんだよね。だから、もう飽きたてきたし心霊スポット巡りは今回で終わりにしようか、なんて言って探検しに行った場所でね、ついに」  そのころを思い出し、興奮してきたのだろうか。身を乗り出すようにして、文恵は続ける。 「起きたのよ、心霊現象が」
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